占い師が教える幸せになる恋愛論｜不倫／浮気／復縁の悩み解消コラム

新築の家、優しい表情の家族写真、整頓されたキッチン、オシャレなダイニング。

テーブルに並んだコースターと子どもが着ているワンピースは手作りなのだろう。

昔から彼女は手先が器用だった。

「そろそろ子どもを実家に預けて働こうと思うの。」と彼女は屈託のない笑顔で言った。

彼女は高校時代の同級生。

当時はよく夜遅くまでファーストフード店で勉強をしたり、お互いの家に泊まって語り合ったし、恋の秘密も共有した。

彼女の結婚式のスライドショーでは制服姿の私と彼女のツーショット写真も登場した。

写真の中の私は今日の私と違って満面の笑みだった。

「いいねー。」「私も早く職場復帰したいなあ」なんて子どもをあやしながら他の数人が笑った。

オシャレなダイニングを囲む数人の中で当時の私は唯一の独身だった。

おまけに無職だった。

彼氏はいたけれど、結婚は先送りにされていた。

最近そのことについて彼と揉めたばかりだった。

だから余計に嫉妬した。

やっかんだ。

こんな子連ればかりが主役になるような集まりに何故参加するなんて言ってしまったのか・・・と後悔した。

優しい夫と可愛い子ども、実家との付き合い、復職など私が口を挟む余地のない会話が続いていたが、とうとう近況報告の順番が回ってきてしまった。

皆の目が「どんなハッピーを聞かせてくれるのだろう。」と輝いていた。

えーっと・・・特別なことは無いんだけど・・・・と自分でも驚くほど小さな声で話し始めた。

十数年務めた会社を退職したこと。

今は無職なこと、でもそれは自分の意思で少し休んでいるだけ。

ほら、人生の夏休みってやつ？

もう少し休んだら働き出そうかなーなんて思っているの。

彼氏はいるけれどもう少し楽しみたいから今はまだ結婚はいいかな・・・・何とも言い訳がましい報告を終えた。

「自由でいいなぁ。」「今のうちに楽しみなよ。」という声が一通り聞こえてきた後、「え？そんな状態でこれからの人生設計大丈夫なの？」という言葉が私に突き刺さった。

突き刺した相手は新築の家の主の彼女だった。

彼女の表情は相変わらず屈託のないものだった。

私を傷つける為でもなく、陥れるためでもない言葉。

それは純粋が故に私の心をえぐった。

苦笑いするのが精いっぱいで何一つ言い返せなかった。

他の数人は意に介していない様子で、次の近況報告が順調に始まっていた。

我が人生の夏休みにおいて最悪な一日だったことに間違いない。

数日後、実家の母に何気なくその最悪な出来事を話した。

明るい母のことだから、きっとあははと笑い飛ばしてくれるだろうという期待を込めて。

「一生懸命働いて、コツコツ頑張ってきたアンタが何でそんなこと言われなきゃならないのよ！！」意外にも母は涙声だった。

私は突然の母の激高に驚き、そして涙を堪えるのが精一杯だった。

母が味方をしてくれた嬉しさもあったのだが、そこで大切なことに気が付いた。

あの時の彼女の言葉は仕事も結婚も見通しが立たないことを心配して不安に怯える私自身の声だった。

それが彼女を通して自分自身に跳ね返ってきただけだった。

そして、母の言葉はそんな卑屈になっていた私への人生からのギフトに違いない。

このギフトを活かさない手は無い。

私には未来の計画書は無いけれど、コツコツ積み重ねた過去があった。

それは私の最大の武器じゃないのか。

自分にはもう何もないと思っていたけれど、大丈夫だ！！

私はその日から過去の経験という大きな武器を携えて自信を持って歩くことにした。

学生時代に真面目に勉強したこと、就職してから十数年の間に経験した様々な経験・・・営業目標を達成したこと、数字を大きく下げて居心地が悪かったこと、ミスをして上司に怒られたこと、当時の恋人への愛が醒めていったこと、お客様からのクレーム、通勤中にパンプスのヒールが折れたこと、感謝の言葉をもらったこと、同僚と居酒屋で愚痴った夜、悩み抜いて退職を申し出たこと、結婚を焦って彼と喧嘩したこと・・・・あの日の最悪な事件でさえも全ての経験が未来を切り開く武器になる。

これからも経験を積み重ねていけばいいのだ。

武器を磨きながら自分でワクワクするような明日を作っていくことに集中すれば大丈夫。

その積み重ねが未来になるはず。

それまでは恐れていた失敗もいずれは武器になるとわかったので初めてのことにもどんどんチャレンジするようになった。

人の評価を気にして、他人の物差しで幸せを図ろうとする弱気な自分は気が付いたら消えていた。

私は人生からのギフトを両手で受け取ったのだ。

あれから何年が経っただろう。

私はこうして好きな仕事をして、彼とも幸せに充実した生活を送っている。

新築の家の彼女とはあの日から連絡を取っていない。

実は彼女はあれからすぐに離婚して・・・なんて言ったら物語としてはよく出来たものかもしれないが、恐らくあの家で幸せに暮らしているのだろう。

もしも、あの日に戻れたら・・・。

今の私ならきっと彼女にこう言い返しただろう。

「あら。一年後の自分も五年後の自分も、想像がつかないからこそ人生って楽しいのよ。」と。